「寺田説」
寒風の中、艶葉に凛と咲く椿が好きである。古人は冬でも光沢のある緑色の葉に霊力を感じたらしい。西欧では「日本の薔薇」とも呼ばれていると聞く。花の散り際については不吉と好まれないけれども、しっかりと観察、分析した人物もいる。「天災は忘れた頃にやってくる」旨の著書のある物理学者で俳人でもあった寺田 寅彦氏は、椿の観察を重ねて科学的なことばを残している。椿はうつ向きに落花し始めても、空気抵抗、重心の位置も関係するが、空中で回転して仰向きになろうとする傾向があり、低い木では、うつ伏せ、高い木は仰向けになりがちである。
落椿に心をとられても、落花の瞬間のことは想いだにしなかった。理系的な花の愛で方もなかなか細やかで素敵。(由)