「いつものところで」
大のご贔屓だった中華料理店。造園家志望で南米に行くはずが鹿児島でお店を始めることになったと聞いた。芸術に造詣が深く、良寛様が好きで、書に南画に写真にといつも素敵な感性を披露していた。もちろん、温かい心のこもった、旬の素材を生かした独創的な料理の数々は絶品で、いつも体も心も元気にしてくれた。でも、人生の残り時間を自分の時間に使いたいと料理稼業を卒業してしまった。いつものところでお食事を、といえるようなお店にこれからめぐり会えるだろうか。どんなに美味しくても商いの料理は時々よ、のことばをプレゼントしてもらったけれども。(由)