「さりげない写真」
今年の春、91歳で旅立たれたY氏の写真帖を時々めくる。ご贔屓の雑誌にかつて掲載された7枚の写真である。
還暦を迎えられたとき、楽しく充実した生き甲斐のある日々にしたいと、誰にも教わらず、勝手気ままに、美しいと思ったもの、写したいと思ったもの、すきなものだけを自己流で撮り始められたとのお話が添えてある。夕日、春風、街並、ひととき、晩秋・・・。人物は一人もでてこないのだが、あたたかな人の雰囲気が伝わってくる。写真は、「心」を写すもの、「写心」との名言。さりげなく、偶然に出会った、あるがままの風景を好まれた故に魅かれてしまうのだろうか。(由)