「をかしきもの」
「枕草子」を教わって一番気に入ったことばが「をかし」だった。好きな言葉は、本来の深い意味がわからなくてもすぐに使ってみたくなる。学校からの帰り道、友達と道すがら目につくものに適当に「をかし」をくっつけての言葉遊びをして、笑いあいながら歩いた。私達があまりに笑いさざめくので、先を歩いていた山高帽氏がくるりと振り返って、私はなにかおかしいですか、と質問されてしまった。ロマンスグレイの粋な中年紳士には私達の「をかし」が通じなかったようだ。もしかすると、未熟な言葉遣いだったのかもしれない。
「雁などの列ねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし」の頃になると思い出す。(由)